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■行くたびに発見がある〜高田明さん(サンフォレスター)

◆日時:平成14年2月20日(土)15:00
◆場所:京都府木津振興局
◆お話:サンフォレスター 高田さん
◆聞き手:田村(京都府林務課)、下村(森林再生支援センター)
 

 

高田さん

■高田さんの原体験

田村・下村:
お忙しいところお時間をいただきありがとうございます。よろしくお願いします。
高田:
いえ、こちらこそよろしくお願いします。まあ2時間くらい喋ることはあるんですが、話あちこち行くと思いますがよろしく(笑)。
田村:
(笑)早速ですが、こういう活動をされるようになった動機についてお聞かせ下さい。
高田:
昔から山が好きで、よく山歩きをしていました。
昔京都の東山に住んでまして、山が遊び場でした。高校の時には、生物クラブに所属していたということもあって、こういうのが原体験として私にはあったんだと思います。
それから、平成7年くらいだったかな、外国の山なんかに行って感じたことというのもありますねえ。スイスやカナダ、ニュージーランドの山々を見たりすると、きれいなんですよねえ。
田村:
どういったところが日本と違ったんでしょう?
高田:
登山道がきちんと整備されてて、人の手がちゃんと入っている感じがしたんですね。これに比べ、日本の山は立ち遅れていると感じ、何かしたいと思いましたね。
日本は山を資産として見過ぎているんちゃうかなと思いましたね。

■立ち上げ当初のサンフォレスター

田村:
そういう原体験なりご関心が背景にあって、「サンフォレスター」に参加されたと。高田さんは「サンフォレスター」には結成当初から参加なさっていると伺っていますが。
高田:
そうです。会のそもそもは、平成8年度に府と山城町の事業として、交流の森づくりで募集されたんです。確かうちの1年後に「うじ」さんができたんやったと思います。
下村:
最初から凄い応募があったと聞いています。
高田:
50名募集のところに300名程応募がありました。ご存じかもしれませんが、その時の選に漏れた方が自主的に結成されたのが「みどりの会山城」です。そこからまた「みどりの会桃山」などいくつかの団体が生まれてきています。
私は運良くその50名に入りまして、それからずっとやっています。
最初の平成8年は年7回の活動日があって、当時この振興局にいらした山下さんをはじめとする方々が熱心に取り組まれてました。平成9年度からはもう自主運営ということでやってます。
田村:
高田さんは立ち上げ時からずっと会長をされてらっしゃる。
高田:
いやー。実際に集まってみると、山城町外の人が80%くらいいて、そうねえ、奈良、大阪、京都、近所では精華町とかそういうところから広く参加されてまして、長瀬君なんかは神戸ですからねえ、いろんなところから来られてます。山城町に住んでていろいろやってる人というと4〜5名くらいしかいなかったんでしょう。そういうことで目付けられとったんちゃうかなあ(笑)。そういう訳で最初から会長させられました。
田村:
どんな方が参加されているんでしょうか?
高田:
年齢的には、結成当初は18才から72才まで各層おられましたね。40才以上が多かったようです。今は70代が4名くらい、20代から30代が10から14名くらいいて一番多いですね。
下村:
女性の方は?
高田:
10人くらいですねえ。
下村:
先ほど山城町外の方が多いというお話でしたが。
高田:
ええ、地元の人は少ないですねえ。街の人は「山で英気を養う」という気持ちがあるんだと思いますが、地元の人の場合は日常的な仕事の場という感じになってしまうんでしょう。
田村:
50人の枠というのは。
高田:
これは町と組合の要請なんですわ。駐車に使えるスペースの問題とかありまして。この枠がなくなったらもっと人数は増えると思います。今は、辞められる方が出たら、50人の枠内で補充募集、という形になっています。
下村:
50人全員が常に参加しているんでしょうか?
高田:
まあ忙しくてなかなか参加できない方もいてはりますし、実際に常に現場にいるというのは、そうねえ今は20名くらいですかねえ。結成当時は30人くらいいましたが少し減りましたね。そのかわり続いている人はベテランです。奈良や南山城の方でリーダー的に活躍するようになった人もいます。安全面を考えると30人くらいが限度とちゃうかな。

■フィールドと運営

下村:
今活動されている山との関係について教えていただけますか。
高田:
山城町立の森林公園「レストヴィレッジ山城」の中の財産区の山17.7haで、町と財産区が5箇年の契約をしてます。
下村:
サン・フォレスターさんと財産区が契約を交わしているわけではないんですね。
高田:
町が契約して、うちが使用しているという形ですね。町とサン・フォレスターの間にも契約関係はありません。
田村:
では、ちょっと話題を変えまして、会の運営についてお聞かせ下さい。まず資金的なところではどのようにされていますでしょうか。
高田:
1年目は府、町に頼りっきりでしたが、2年目の平成9年度からは自主的に工夫しています。まず、会費が年間3,000円。これで、保険料、通信料と宿泊費の補助分をまかなっている状況です。あと隔年に日本財団の助成金を申請してます。これは機器類、チェンソーとか刈り払い機とかに当ててます。
あと町からは、15万円程度の助成を消耗品として得ています。補助金の場合は半額ですからねえ。半分はこっちから負担しなくちゃいけないからキツいですね。
田村:
機材的にはどのようなものをお持ちですか?
高田:
今はチェンソー3台、刈り払い機5台、発電器1台、運搬車2台を所有しています。今欲しいと思っているのはマキ割り機ですね。これで伐採木をマキ化して、販売にまわせればと思ってます。
田村:
会としての意志決定みたいなのはどのようにされていますか?
高田:
いろんな決めごとや事務作業なんかは役員7名(会長、副会長、会計監査)、若手幹事5名の12名でやってます。
みんな遠くて大変なので、役員会だけを別に開催するということはしてません。活動日に合わせて相談します。

■活動について

田村:
会の活動について伺います。実際になさっているのはどのような活動なんでしょうか?
高田:
山でやることは全てという感じです。
田村:
具体的には?
高田:
間伐、枝打ち、それに伴う地ごしらえや搬出などの林業的な活動、自然環境の調査・観察や測量、道や階段などの遊歩道づくり、炭焼きなどですね。森林公園山開きに合わせて木工教室を開いたりもしました。今やりたいと思っているのは、実のなる木を植えて、動物が下まで降りてこないようにすることですね。今も栗を植えていっているんですが、サルとの競争です。
あと、年4回ほど、1日体験ボランティアの日というのをやってます。
下村:
これは、会の外の人が参加する、というイベントになるわけですか。
高田:
ええそうです。一般に呼びかけて。これがきっかけで入会された方もいます。

■子どもを山へ連れて行く

高田:
活動の新しい展開としては、一昨年の平成10年から「きこりっこ」と称して、子ども達を山に連れて行ってます。
田村:
12月のプレ・ワークショップでも紹介されていましたね。
高田:
親と離れて山で1泊2日です。保護者は山に入る前に帰っていただいてます。一昨年は7人、昨年は24人の参加がありました。
田村:
山ではどういったことを?
高田:
樹木観察のビンゴゲームをしましたね。これは木を当てられたら番号を消していくというものです。あと草刈りのような作業もしてもらいました。ちゃんと刃物をつかってね、最近の子どもは刃物を使う機会なんかなかなかないようですからね。
なんといっても喜ばれたのは「ナイトハイク」ですね。お互いに見えない距離をおいて、夜の山にいさせるというものです。
田村:
子どもの受け入れとか、環境教育とかといったことについては、今までお話を伺ってきたグループでも話題には出るんですけど、安全面ですとか実際の仕事量が大変だといったことで、今後の課題とされているところが多かったんですが、こうして既に実施されてるわけですけど、計画とか準備など大変だったんじゃありませんか?
高田:
いやそれはもう。こんな計画書も作って臨みました。
下村:
うわー。これ凄いですね(驚)。
田村:
これだけの検討をしてから実施されたわけですね...
下村:
最近は地域と環境の教育力に期待して、子どもを地域に預けたり、といった試みがいろんなところで始まっているようですが、「サンフォレスター」のような任意のボランティア・グループでこういうことされたというのは、かなり先駆的な試みなんじゃないでしょうか。それにしてもこの計画書にはこのグループの層の厚さというか、実力というか、感じますねえ。
高田:
ボランティア団体としてやったのはうちが初めてとちゃうかな。かなり早かったと思います。最初こういうことをやろう、ということになったとき、単独での実施は不安だったこともあって、教育委員会に入ってもらいました。で、教育委員会から各学校に呼びかけてもらいました。
下村:
そういう連携があって可能になっているんですね。
高田:
参加してくれた子どものアンケートがこれです。これを生かしてまた次の年の活動を計画していきます。
下村:
ああ、なるほどねえ...いいですねえ。子どもが楽しんでいるのが直にわかりますねえ。
高田:
なによりも嬉しかったのは、「おっちゃん、来年も来るわなー」と子どもが帰り際に言ってくれる訳ですよ。感激しましたね。
教育との関係では、学校に竹とんぼの作り方の講習に行ったりということもしています。

■活動のカンドコロ

田村:
感動があるわけですね。「ボランティア」というと、「奉仕」とか「公徳心」とか「社会的使命」といったものが連想されてしまうところがありますが、いままでいろいろなグループのお話を伺ってきて、楽しんで活動することが本質的に大切なんだということが判ってきました。
高田:
いや、そうなんですよ。「使命感」を言い始めたら、活動はつぶれます。また、「つぶしたらあかん」という意識が出てくるとまたつぶれますね。「使命感」言い出すとしんどくなる。個人の思いとしてそういうものがあるのはいいですけど、それを言い出してしまうと、ついて行けない人も出てくる。
適材適所いうたら失礼かもしれんけど、それぞれの人がそれぞれの個性を生かせるいうんかな、そういうところがボランティア団体の良さだと思います。鳥を知っている人、料理の得意な人、イラスト描ける人、それぞれに活躍できる場があって、それがグループの力になっている。「べき論」を持ち出すことでそういう自由さいうか楽しみがなくなってしまったらボランティア団体としての良さをスポイルすることになってしまうと思いますねえ。
田村:
かなりシリアスな認識を持って、ボランティアだからこそできる林業、というものを模索されているグループもあるようです。
高田:
そういったところもおありかとは思いますが、やっぱりモチはモチ屋というか、そういう面ではボランティアは林業家には絶対かないません。ボランティアはボランティア。作業的にはできることは知れてます。
でも一方で森林ボランティアだからできることもあると思っています。それは、森の楽しみ、森というところがいろんな発見がある場所なんだ、ということを街の人に知ってもらう、体験してもらう、そういう機会を提供することができるというのは、森林ボランティアならではの意義だと思います。
下村:
まさに「里山の伝道師(伊井野雄二)」ですね。
高田:
やっぱりねえ。森には発見があるんですね。森の中に何かを見出したら、それはその人の生き甲斐になるんちゃうかな、と思いますねえ。鳥が好きな人もいるし木を倒す快感がたまらない、という人もいる。人によって何を見つけ出すかは違うと思うけど、何か絶対見つけだせるものがある。
下村:
そうですね。街、特に新しい都市では、何かを見つけだせるヒダのようなところがどんどんなくなって、つんつるてんの空間ばかりですからねえ。

高田:

人工林にも発見がある。雑木林はなおさら。何度も歩いて馴染んだ山でも、季節が変わるたび、行くたびに発見がある。ああ、こんなところに桜があったんか、とか。僕はソヨゴいう木が嫌いやったんやけど、じゃまやしすぐ倒れるし。ところが、よい炭になるとかその良さを学ぶとソヨゴが、森がまた全然違って見えてくる。こういう発見がある、というところは森ならではの喜びだと思いますね。

■連携とその課題

田村:
喜びの経験がボランティア的な関わりを可能にするとのことですが、やはりしんどい場面もいろいろおありかと思います。これはマイッタなあ、というようなことってありましたでしょうか?

高田:

会をまとめていくという苦労はそりゃ常にありますね。でも今までで一番参ったのは、せっかくみんなで作った小屋を壊すことになったのがつらかったですねえ。行政側とは常に相談して進めていたんですが、担当者が変わったり保安林での行為についての申請事務がやたら複雑だったりといったといったことがあって。
下村:
長瀬さんにもそのお話は伺いました。必要な手続きについての窓口的なものを行政側に設けてもらうだけでもだいぶ違うんだけど、と仰ってました。またこういう行き違いはほんとゲンナリする、と言われてました。
高田:
ほんとイヤになるねえ(笑)。しんどい、やってられん、という気持ちになったらボランティア活動は続かなくなってしまいます。行政は、森林ボランティア的な関わりを良いことと位置づけてそれを推進するなら、それをサポートする法的な措置というか支援が欲しいですね。窓口もそうですけど、活動拠点の設置については、どこまでなら良いのか新しい基準が必要やと思います。
田村:
今まで京都府はいろいろな森林ボランティア団体の立ち上げに関わってきました。まあいってみれば焚きつけておいてあとは自主的な運営におまかせする、がこれまでの行政スタイルだったわけですが、立ち上げ後の関係作りにおいてもしっかり考えなければと思い、こうした調査をしているわけですが...
高田:
まあそうですねえ行政には森林ボランティアが活動をしやすくなるような条例を作ったり、運用を考えたりといったことをお願いしたいですね。
下村:
楽しみの他に、いろいろな交渉事や事務処理等あると思いますが、そういう部分の信用づくりや組織としての体力づくりのためにNPO法人(特定非営利法人)化するというところもあるかと思うのですが、そういったことについてはどう思われますか?
高田:
NPO化することでできるようになることと、できんようになることとあると思いますね。うちの場合はボランティア団体としての良さを持ち続けたいですね。
下村:
ボランティア団体の良さ、組織的なNPOの良さ両方ありますから、お互いに連携、相互補完し合うようなことができたらいいな、と思います。僕もNPOでこの仕事をさせてもらっている訳ですが、NPO側としてもどういった形で関わっていくのか考えないといけませんね。
高田:
そうですね。
田村:
サンフォレスターはこれからどうなっていくのでしょうか?
高田:
平成8年度結成ということで、できた当初はけっこう先駆け的な存在でしたね。今はいろんな団体が活躍してますが当時はまだ少なかった。もともとリーダー養成の森、という位置づけもあったんですが、ここで森について知って、各地域へ人が広がっていったらいいなと思います。
下村:
先ほども奈良や南山城で活動されているメンバーの方のお話がありましたね。サンフォレスターとしては、活動フィールドを拡大するということは?
高田:
考えていません。
田村:
現在の他のグループとの交流は?
高田:
「うじ」さんとは日頃から交流があります。橋詰さんのところとも検討中なんですが、二ノ瀬はちょっと遠くて。今度の日吉の府民の森の新団体立ち上げにも行かせてもらって、ちょっと話をしてくることになってます。
「森林と市民をつなぐ全国の集い」が大阪で開催された時も行きましたが、いろんな団体が来ていたようですが話を聞くだけになってしまいましたね。
下村:
「きょうとの森ワークショップ」ではいろんな参加が可能になるように工夫したいと思います。
高田:
やっぱり何にせよ一泊できるようなつながりの場を持つことが大切かなと思いますね。山の中に活動拠点を持てるような支援が是非ほしいですね。
これで2時間くらい喋ったのかな。まあ話あちこち飛びましたけどこんなんでよろしかったですか(笑)。
田村:
いえいろんなお話が伺えてよかったです。本ワークショップの方もよろしくお願いいたします。
今日はどうもありがとうございました。
 

上記インタビューには登場しませんが、よく練られた森林管理計画書も拝見しました。この管理計画書や「きこりっこ」計画書に見られる緻密な企画・計画力、「きこりっこ」に代表される「魁」としての実行力、そしてなによりも「発見と感動」を大切にした「ボランティア」という関わり。ボランティア的な活動が可能にするものと、ボランティア的な活動を可能にするものについて、いろいろな示唆に富むお話でした。
高田さん、どうもありがとうございました。
 

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