シンポジウム
「シカが森を壊す、山を崩す?」を開催
2004年に私たちがシンポジウム「シカと森の『今』をたしかめる」を開催してから5年たちました。最近はしばしば新聞紙上でシカの問題が取り上げられ、テレビでも山村に出没するシカの映像が流れます。問題の認知度が上がれば賢明な解決策が見いだされると考えたいところ。しかし長引く不況の中、ふつうの市民にとっては、「シカが増えたのがどうした!?」と相手にする暇も余裕もないというのが正直なところでしょう。ましてや日頃訪ねる機会のない奥山の自然がどうなっているかに気をかけるのは、森林管理に携わる人や自然好きのごく限られた人たちだけというありさま…。
山では増えすぎたシカが絶滅危惧植物を喰い尽くしています。森の次世代をになう稚樹を喰い、親木の樹皮を剥いては枯らし森を壊しています。奥山であろうと都市周辺の里山であろうと、「こんなところにまで」というところに次々に現れています。シカ問題は沈静化するどころか、むしろ広域化、激甚化が進んでいます。 さらに、シカが増えると森が壊れるだけではすまないことがわかってきました。下生えがなくなった森では土壌浸食が進み、更新が阻害され裸地化した斜面が崩壊の兆候を呈しています。懸念される箇所はあちこちで見つかります。清浄な水と空気を与えてくれる森の生態系全体が危機に陥っている。いま適切な対策が取れなければ社会生活にかかわる災害の発生を食い止められないかもしれません。他人事ではすまされないのです。 日本の自然を護るためにも、災害を防ぐためにも、いまシカは減らすしかありません。一方で、人は大昔からシカとつき合ってきました。シカは日本の自然の大切な一員ですし、私たちはシカのいない自然をつくろうというのではありません。ことし2010年は、国連の定める「国際生物多様性年」です。日本でも生物多様性を保全し自然を再生することが課題とされています。 私たちはどのように、シカと森と人の折り合いをつけていけばよいのか。あたらしい取組にも学びながら、できるなら合意のうねりを作り出し一刻も早く発信したい。このシンポジウムはその一助となることを目的とします。 |